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「でも、なんで兄ちゃん」
別にリアリストな訳でもないが、そんな非現実な。
信じられない。
本当にカズは兄ちゃんなのか。
信じられない。
でも彼に触れることが出来る。
信じられない。
でも俺のことを知りすぎてる。
信じられない。
でも、信じたい。
「神様に頼み込んじゃった」
そう笑う兄ちゃんは、俺が覚えてる顔よりも幼い。
そう、それも高校生に見えるくらいに。
「やっと許可してくれて、こっちに来たときには亮太がもう高校生になってた。だから俺も高校生になった」
まぬけに口を開けているだろう俺に、兄ちゃんはくすくすと笑う。
「そっち方が、話しやすいでしょ?こんな話信じてもらえないかもしれないけどね。それでもまた逢いたかったんだ」
頬に手を添えられて、びくりと反応する。
さっきまで嬉しそうに笑っていた兄ちゃんは、少し哀しみに歪んだ笑みになる。
「俺は後悔なんてしてないよ。だから、謝りたいなんて言わないでくれ…!」
あの日、カズに向かっていった言葉。
俺は本当に謝りたかった。
兄ちゃんの未来を奪ってしまったのだから。
でも、兄ちゃんは謝らないでと言う。
そしたらさ、もう、一言しかないじゃんか。
「兄ちゃん、俺を守ってくれてありがとう」
感謝してもしきれないこの気持ちは、伝えきれない。
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