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しばらく歩いた所で、フェアは突然起きた衝撃に顔を歪めた。
「おおっと。すまない」
どうやら人とぶつかってしまったらしい。俯いて歩いていたので前を見ていなかった。
「こちらこそすみません」
頭を下げてから、相手の顔を見ると、相手の青年は不自然に目を背けた。短く切りそろえられた清潔感のある茶色い髪に、深い黒い瞳。
その青年の後に続き何名かの男達が続き、フェアは思わず後ずさりした。みんながっちりとした背広に身を包んでいるが、そこから漂う只者では無い気配を完全に消してはいなかった。
「すまないな坊主」
一番最後を歩いていた男がこれ程かと言うほど心の篭っていない言葉を言う。息を呑み、「いえ……」と掠れた声しか返せなかった。
____殺気。そう言う類の物がこの男達から滲み出ている。
「行くぞ」
無骨そうな男の声がして先頭の青年が頷く。青年はチラリとフェアの方を見てから頷き、歩き出した。
「何なんだろ、あの人達……」
過ぎ去る男達の背中を眺めながらひとりごちに呟く。パーティーを楽しみに来ている感じでは全くない。
『御集りの皆さん。お待たせしました。エルガ陛下のご来場です』
そんな一抹の感覚もすぐに消え去るほどのアナウンスが鳴った。場の雰囲気が一気に変わり、辺りが一気に暗くなってステージにスポットライトが当たる。
暗幕の裏からゆったりとしたローブを身に纏った王が姿を現し、フェアはその姿を見つめた。
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