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始まりは一つの轟音だった。耳の鼓膜が破れんばかりの爆音と、目が眩むほどの光。城の一階部の天井に仕掛けたお手製の爆弾が爆ぜたのだ。
予想はしていたがもの凄い風も吹き付け、ウィルトは思わず顔を覆った。それが止むと途端に聴こえてくるのは火災報知器のけたたましいサイレンの音と、周囲の人の悲鳴だ。
「ウィルト。行くぞ!」
逃げ惑う人々の中で、ケネスは冷静にウィルトの肩を叩いた。
「了解!」
辺り一面に煙が充満し、パニックは一層大きくなっている。ウィルトはその混乱の中、ステージで立ち尽くす王に向かう一人の人影を発見した。
「ヒューズ?」
仲間の一人、ヒューズが小型の剣を右手に王に突進している。
「今なら王を殺れる!」
「よせ!」
確かに今なら一気に接近し、その剣を喉元に当てられそうだ。その首を落とせば帝国の支配は終わりを迎えるかも知れない。
____しかるに現実はそんなに甘くは無かった。ケネスの制止を無視して突撃したヒューズは、王まであと一歩の所で動きを止めた。
「おおっと。私の大好きな王様に触らないで下さい」
ヒューズの腹部から大量の血飛沫が飛び散り、その黒いスーツ姿が崩れ落ちる。王の背後から現れたヒョロッとした人間が、血に染まりながらヒューズの亡骸を踏みつける。
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