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『帝都ヴェ二クスに住む皆様御機嫌よう。祝祭の本日、皆様はいかがお過ごしですか? 本日をもってガルア帝国は戦争終結百年の節目の年を迎えます』
夕暮れに陰り始めた世界の中心の都。迷路の様に入り組んだ街並みの中の至る所にある拡声器から、陽気な男の声が鳴り響いてくる。
辺りを見渡せば成る程と、装飾された家々の数々が視界に飛び込んできた。
同時に、武装した帝国軍兵も。
「敵を発見、これより戦闘を開始する!」
「住民の皆様、落ち着いて避難して下さい!」
「王に刃向うテロリストを生かして返すな!」
帝国のおめでたい日を一緒に祝おうと言う状況では無かった。
もっともはなからそんな気はせず、銃を持った兵士三名に追われている男、ウィルト・コールスは茶色い髪をつたう汗を拭う間もなく走っていた。
『百年前に起きた大気中の元素を巡る戦争。確かにこの世界に漂う元素、ケールが無ければ人は生きてはいけません』
「撃て!」
背後で聴こえた冷ややかな声にウィルトは反応し、慌てて横の路地裏に逃げ込んだ。その直後、雨あられの様に銃弾が家の壁に降り注いでは弾けていった。
「おいおいケールが勿体ないってのに。……帝国はケールを管理してるからお構いなしか」
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