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一体何が起こったんだ? 大きな音と共に爆風が起こり、周りの全てがぐちゃぐちゃになった。意味もなくトイレに行っていたフェア・ロイナスは痛む頭を押さえながら立ち上がった。
「ば、爆発だ!」
「早く逃げろって!」
たったさっきまで舞台でダンスをしていた人たちが悲鳴を上げながら逃げ惑っている。煙がもくもくと立ち込め、その先では火災と水の雨が混ざり合っている。確かみんながいた方向だ。
「リアラ、ユーリィ、みんな!」
逃げ惑って出口に向かう人たちの波に流されながら、フェアは懸命に走り出した。
「怖いよぉ、おかあさーん!」
泣き叫んでうずくまっている男の子がおり、フェアは立たせてやった。
「ケガはないか?」
「うん……」
「なら、みんなと一緒に向こうに逃げるんだ。お母さんもいる筈だから」
「……わかった」
男の子は何とか泣き止み、人々と一緒に非常口へと向かって行った。本当なら自分も行くべきなのかも知れない。でも身体は吸い寄せられるように現場へと向かってしまった。
自分には誰かを助ける力も度胸もないのに……。
「何だよこれ……」
崩れた屋根の破片を避けながら、フェアは友達のいる会場に戻って行った。
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