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台座の上に置かれたその黒い剣は、フェアが少し近づくと反応したかのように徐々に白い光をまとわりつかせ始めた。
自分の身長程ありそうな大きさの剣を青い瞳に捉えたフェアは、身体に電流が走った様な衝撃を感じていた。
そして気付いた時にはもう、フェアは剣の柄に触れていた。
「重たい……」
剣は簡単に装置から外れ、フェアは両手でそれを持ち上げた。ただ見た目が格好良い剣だけだろうか。
複雑に彫られている模様を眺めていたフェア。次の瞬間、脳裏に一筋の光が差した。
「……っ!」
目の前でフラッシュした後、平面世界に様々な光景が映る。
人と人が剣で戦っている光景。青空の下、皆で歩いている光景。家の中で楽しそうに食事をする家族の光景。
「これは……?」
呆然と立って流れる光景を見ていたフェアの右腕にに、突如光輝くヘビの様な紐状の物が絡み付いた。
「うっ!」
何かが身体に入って来る様な気持ち悪さを感じると、浮かんでいた光の世界は消え去り、元のじめじめとした研究室の光景に戻った。
「今のは何だ?」
突如半壊の扉が開き、数名の男たちがなだれ込んでくる。驚くことにみんな黒いスーツを着用しており、その先頭にいる男は紛れもなく、トイレの前で会った人達だ。
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