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「弾が消えた?」
前方で上がった声。少年に向けられて放たれたはずの銃弾は白い粒子となって消え去り、激しい風が辺りに吹き付け始めた。
「何が起こってるんだ……」
ウィルトは嫌な胸騒ぎを感じた。何かが始まろうとしている……。
台座の上に立って光の渦に包まれている少年の瞳は、青から赤へと変わっていた。明るく射していた青い瞳の光は消え失せ、暗く輝きを失った赤い瞳になっている。
「全員殺す」
少年から発せられた冷たい声に身体が震えた。先程までなよなよしていた奴とは雲泥の差とも言うべき違いだ。
ついで少年はゆっくり、一歩、また一歩と台座を降り始めた。あの姿……テレビ中継で見たエルガ王の演説を終えた後のような威風堂々とした姿と一緒だ。
「カッコつけてんじゃねーぞ!」
別のレジスタンスグループのランドは、それでも怖じ気づく事なく少年へと剣を構えた。
「独裁者の奴隷の分際でなぁ!」
剣が降り下ろされた瞬間、ウィルトは「止めろ!」と声を絞って叫んでいた。どちらの為かと訊かれれば、仲間であるはずのランドの為だ。
次の瞬間、激しいスパークが起きた。電磁波の音と目に痛みを感じさせるほどのスパークも発生し、ウィルトは顔を腕で押さえた。
「何だ?」
──分解されている。辛うじて開けた右目に見える光景はあり得ないものだった。
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