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瞬間移動と言うべきか、少年はかなりの速さでもう一人の男の目の前に移動すると、その喉にチェインソードを突きつけた。
「私に刃向ったな」
悲鳴と断末魔を上げる男から剣を放し、少年は嗤う。ウイルトはその姿に心底から恐怖を覚えながら周りを見渡した。誰もが震えており、腰が砕けて床に倒れて震えている仲間もいる。
「何なんだよあれは……」
「帝国はあんなものを持っていたのか」
「に、逃げてもいいよな……」
仲間たちの声が耳に次々と入って来る。ウイルトはそんな最中、少年が次の獲物を発見して動いたのを確認した。迂闊にも血気盛んな仲間たちだ。みんな剣を抜いて戦おうとしている。
「こんな事じゃ全滅する……っ!」
ウィルトはその場で歯ぎしりをすると、腰に帯刀していた両刀刃の剣を引き抜いた。
「何をする気だウィルト?」
焦りの色を隠せていない面持ちのケネスが訊く。
「俺が頑張ってあいつを引き付けます。その間に逃げましょう!」
「馬鹿かお前は……無駄な正義感を振っても意味なんかないぞ!」
「でもこのままじゃ全員殺されます! 何とか振り切ってみんなと合流してみせます!」
「お前には無理だ!」
そうこうしている間にもまた一人仲間が消滅した。その光景を見たケネスは額から流れる汗を拭いながら舌打ち交じりに言った。
「チッ。仕方ない。俺達が何とかするしかねーのかよ!」
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