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「当たれ!」
懸命に少年の足を目がけて発砲するケネス。無論結果は同じだ。
「少し邪魔が多すぎたな……」
背後の銃弾を直前で消し去りながら少年が赤い瞳をチェインソードに向けてしみじみと呟く。ウィルトは茫然と直立不動でその姿を見ていた。
「まぁ楽しみはこれからだからな」
「ウィルト!」
「何やってるんだ!」
散り散りになった仲間の声がウィルトの背を押した。
「楽しみ……?」
少年はさも愉快そうな表情でウィルトを見た。
「フフ。少しだけ休んでやる」
気付けばチェインソードの光が段々と弱まって来ている。少年の赤い瞳も徐々に掠れ、しまいには立ったまま瞼を閉じてしまった。そして次の瞬間、膝をついて倒れ、地面に崩れ落ちた。その右手には元の黒い色のチェインソードが相変わらず握られているが。
「助かった……」
誰かが言った。身体から力がスーッと抜けていく。しかし、敵地の真っただ中であるこの状況で、休む間などない。
「怪我人を急いで介抱しろ! ここから脱出する!」
ケネスの大声が淀んだ空気の室内に響き渡る。
「ウィルト、しっかりしろ。お前はまだ生きている」
仲間の男が肩を叩いて言う。
「あぁ……」
眠っている様に倒れている少年を見据えながらウィルトは声を返した。
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