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「……それじゃあウィルト。俺は怪我人の手当てに行くよ」
若干気まずそうな声で仲間の男が言い、その場から離れて行った。ウィルトはため息を吐きながらケネスから筒状の装置を受け取ると、少年の前にしゃがんだ。
「チェインソード。こいつさえ頂戴すれば帝国の野望も潰える……か」
不気味なほど黒く、何色へも染まっていない刀身を眺めながらウィルトは呟く。先程までは剣の刃の部分は青白い光が纏っていた辺り、今は起動していない事なのだろうと思う。
「分かってると思うが、絶対に素手で触るんじゃねーぞ」
「はい」
ウィルトは内心でドキリとしながらも、ゆっくりと装置を剣に近づけた。少年の手にしっかりと握られているチェインソードをゆっくりと刃先のほうから装置に入れていく。
「上出来だ」
集中しすぎたのだろうか、いつの間にかチェインソードは装置に収まっており、ケネスが寝ている少年を背中に背負りながら言って来た。チェインソードは思ったよりとても重く、よくもまあこんな物を軽々持ち上げていたなと不思議に思える程だ。
「ケネスさん。別働隊からの連絡で、脱出経路を確保したとの事です」
「流石は精鋭中の精鋭達だ。よし、こんなところさっさとお暇しようぜ」
他の班の仲間の言葉にケネスはそう言うと、装置を肩にやっとの思いで掛けたウィルトに言った。
「はい」
背中から否応なしに感じ重圧に反応するかのように、ウィルトの頬に汗が伝った。
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