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※
フェア・ロイナスは光の中で一人、茫然と立っていた。
「またここか……」
目の前では先程と同じく様々な光景が浮かんでは消えて行く。フェアは神妙な面持ちでそれらを見ていた。
《面白いか?》
脳内に直接人の声が響き、フェアは驚いて辺りを見渡した。
「何だ?」
《質問の答えになってないな。まあ良いか》
どちらかと言えば、女の人の声だった。
《前を見ろ》
フェアは言われるがまま、正面を向いた。新しい光景が数個浮かんでいる。その光景を見た瞬間、フェアは息を呑んだ。
自分が笑いながら男を斬っている……。悲鳴を上げて助けを乞うている大人の男に剣を刺しこんで行く。
「あの剣で……俺が人を……!」
身体が震えた。汗が滲んだ右手をうっ血するほどきつく握り締め、フェアは絶句してしまった。
《フェア・ロイナス。何も悲観することはない。全て私がやったのだからな》
「誰なんだ!」
《……思ったより熱血漢だな。悪くはない。君が私に触っただろう? 正確には触れさせたか》
声は愉快そうに笑っている。
「触ったって……」
その時やっと思い出してきた。台座の上に置かれていた剣に触れ、その直後に謎の人たちに撃たれた。
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