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《さて、その光景は私とお前に刻まれた新しい記憶だ》
「記憶……?」
《そう。人の記憶を糧として力を得る剣》
記憶と呼ばれた光景が消え去り、天より一本の剣がゆっくりと目の前に落ちて来た。落ちた部屋で出会った漆黒の剣。宙に浮いているそれはフェアの目の前で止まり、ゆっくりと近付いて来た。
《君の物だ》
「こんな物なんかいらない」
《フフ。それは無いな。お前も絶対に私の力が欲しくなる》
今度の声はまるで剣から出ている様だった。すると剣が眩い光に包まれ、その光が人の形になって行く。
「その剣は……君は一体何なんだ?」
記憶が刻まれたと言っていた。自分……剣が殺した人の記憶が。
《チェインソード。私の名前はチェインだ》
「ならチェイン。俺を選んだって言うのは……?」
《お前の記憶を見さしてもらった。面白そうだったからお前に取られてやったのだ》
それに……。光の粒子ははっきりと、髪の毛の長い女性の姿へと変わって行った。容姿さえ分からずともスタイルですぐ分かった。
《もうあんな暗くてジメジメした所にいるのは退屈だからな。久々に暴れたくなった》
「そんな理由で人殺しを!」
《いい声だ。良い事を教えてやろう。あいつらはテロリストだ》
フェアはえっ、と声を上げチェィンを見た。
《お前の過去も見た。これから楽しみだ》
そう言われた所で視界が暗転していき、フェアの身体は奈落に落とされたように重くなった。
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