必要にして十分

今日、運動場であのいけ好かない鼠野郎から品を受け取った。よくもまあ一年あまりもこき使ってくれたもんだ。計画性に欠けるのが俺の悪いところで――こんなところにぶちこまれたのはそのせいでもある――刑務所にカネを持ち込むなんてことは思いつきもしなかった。両親兄弟は自分の手で片付けちまったから、娑婆に頼れるアテも無い。

それで代金がわりにやつの使い走りをやらされていたんだが、こんなちっぽけな代物に一年とは！

ひょっとしたら間に合わないんじゃないかと思っていた。州知事はTV伝道師あがりの糞野郎で、おまけに死刑制度擁護派の最右翼だったから、いつなんとき俺の死刑執行命令書にサインするか知れなかった。情けない話なんだが、この一年間はびくびく怯えて震えっぱなしだった。