現世の素敵な巫女さん

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20xx年 東京 ある日の夕暮れ時、夕飯の食材を買う主婦たちでにぎわう商店街。その一角から、ビニール袋を抱えた高校生くらいの、セーラー服に赤いリボンをつけた少女が歩いてきた。 「はー・・卵のセール間に合わなかった・・・おばちゃんたちの力は異常だわ・・・」 力なく肩を落とし、ため息をつく。肩まである黒髪は、だらりと垂れさがる。 「『上を向いて歩こう』って歌があったけど・・こんな日は伏し目がちにもなるわよ・・・」 ぶつぶつと呟きながら歩を進める少女。しかしその時、あるものが目に入った。 「ん!?」 少女の目が、数m先の地面を見据える。そこにあったのは・・・ 「十円!!」 いうが早いか、少女は買い物袋を放り出し、カメレオンの舌先のようにそれに飛びつくと、うっとりとして頬ずりし始めた。 「はーっ・・これぞ金の匂い。俯いてるのも悪くないわ~・・・・あ、そういえば、件の歌って、『スキヤキ』って別の名前があるのよね。こうやって十円がいくつもたまったら、スキヤキでもしようかしら・・・うふふふ・・・・」 いったい何年後の話をしているのだろうか。 とまあ、少女がそんな風に奇怪な行動をしていた、その時であった。 「きゃああああぁっ!!」 「うわあっ!?」 いきなり耳をつんざくような悲鳴がし、少女は思わず十円玉を手放してしまった。 「あっ・・・!」 少女は目を見開くが遅かった。硬貨はちゃりんと音を立て、コロコロと転がり、そのまま道の排水溝へ落ちて行った。 「あああああああーーーーっ!!」 少女が悲鳴を上げる。しかしその後ろでは、大変なことが起こっていた。 「く、来るな、変態!!」 「いやあああ!」 「はぁ・・・はぁ・・」 なんとそこには、『罪』と書かれたマスクをしたパンツ一丁の男共が、何人も人々に襲いかかっていた。 「怪我したくなかったら逃げて下さい!我々は関係ない人を巻き込みたくありません!」 その後ろでは、緑髪で羽の生えた少女が一生懸命叫んでいた。 しかしその途中で、「ひっ」と声を上げ、震えだした。その視線の先には・・・ 「あ、ん、た、ら~~~~!」 先ほど金を落とした、あの少女であった。
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