現世の素敵な巫女さん

4/5
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
表通りから離れ、人けのない山道。その奥に、霊夢の家はあった。ところどころ朽ちている、小さな神社。 「さて、今日の現ナマは・・」 霊夢は賽銭箱のふたを開ける。しかし、中には何も入っていなかった。 「・・・ちっ」 露骨に舌打ちし、ふたを元に戻すと、霊夢は家に上がりこんだ。 「・・ただいま。」 返事はない。誰もいないのだ。 霊夢は部屋の真ん中に寝転がると、ポケットから例の石を取り出し、眺める。 「『陰陽玉』・・こいつのおかげなのよね。私が変身できるの・・」 霊夢は目を閉じる。思い出すのは数年前。まだ戦いを始めていないころに見た、自分にそっくりな・・・・ 「ふー・・・・」 ため息をつき、ゆっくりと起き上がる。 「大切にしなきゃ・・形見でもあるし。」 ・・・・・・・ しばらくして、夜も更けたころ。 霊夢も、布団の中で安らかに寝息を立てていた。 しかしそこに、先ほどから霊夢をうかがっていた人影が、ゆっくりと近づいて行った。 「・・よし。今のうちに・・」 それは、霊夢が夕方会った、緑髪の妖精だった。抜き足差し足、霊夢に気付かれぬよう、息を殺して歩く。 しかし、その時 「うわあっ!!」 バキッ、という音とともに床が抜け、妖精は腰まで埋まってしまった。 「く・・なにこれ・・」 「悪いわね。そこ脆くなってんのよ。」 寝ていたはずの霊夢が、にやりと笑いながら起き上る。 「やられたと見せかけて、こっそりつけて寝込みを襲う・・意外とせこい真似するのね。」 「・・・!まさか、最初から気づいて・・?」 「当然でしょ。私を誰だと思ってるのよ。」 あっさり言い放つ霊夢に、妖精はぐぬぬ、と歯を食いしばる。 「くっ!」 妖精は、突然飛び上がったかと思うと、神社の外、上空高く浮かんでいた。 「私は、これでも『妖怪軍団』の一人、大妖精!そう簡単にはやられません!」 霊夢は、大妖精をつまらなそうに見上げ、言った。 「・・常識の理から外れ、空を自由に飛ぶ・・。奴らの中では、少しはできるようね。」 霊夢はまた石を取り出し、ベルトにはめ込む。 そして、言った。 「【変身】」
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!