護謨紐(ごむひも)

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 こんにちは。どなたかいらっしゃいませんか?  あっ、こちらの奥さんでいらっしゃいますか?ワタクシ、いつも笑顔で評判の・・・、って、そんないきなり断らないで、最後まで話を聞いて下さいよ奥さん。なにか買って貰おうなんて思ってもいませんから、ええ、宗教勧誘でもありませんよ。それに流しのギター弾きでも無いです、残念ながら。  え?忙しいから今度にしてくれって?お時間は取らせませんから。奥さん、なにいきなり怒ってるんですか?しつこいって?ほらっ、そんな腐った鮫みたいに膨れるとキレイなお顔が台無しですよ。ほらほら、またそうやって膨れる。  ああ、やっぱり。ねぇ、奥さん、貴女いま護謨紐に満足していらっしゃらないでしょ。締め付けのきついパジャマやスカートの護謨の痕がついてしまった上に、よる年波の所為で潤いを無くした乾燥肌で痒いなんてことでストレスが溜まって怒りっぽくなってるんですよ奥さん。  違うって?どうしてそこで怒りながら否定するんですか。いや、皆まで言わないでください。ワタクシには解るんですよ、こう、護謨紐に満足してないって雰囲気と言いますか、オーラのようなものが。  それでですね、ここからが本題でして、奥さんこれ見てもらえます?ただの護謨紐だって?可笑しなことを言っちゃいけませんよ、奥さん。このワタクシがただの護謨紐を持って歩いてるように見えますか?まぁ、普通に護謨紐を持っているかいないかなんて解りませんけれど。  奥さん、ちょっとこの護謨紐触ってみて下さい。どうです、シルクにでも触ってるような優しい手触りでしょ。こんな護謨紐は今までなく、とっても画期的・・・、って、護謨紐は生地に包むから直接肌に触れないって?奥さんご名答。  でもね、奥さん、凄いのはそこじゃないんですよ。先ほど言いましたように、きつい護謨で痕が付いてしまうってのが護謨紐の欠点ですよね。ですが・・・、ここからですよ奥さん、よく聴いてね。
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