草刈鎌(くさかりがま)

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 奥さん、こんちゃーっす!  ねッ、なんか庭から声をかけると、とてもフレンドリーな感じに……奥さん?塩なんか持ってきて土俵入りですか?落ち着いて下さいよねッ、ねッ、ワタクシは高血圧でして塩を見るだけでも血圧が上がっちゃって大変なんですから、あ、お気づかいは結構ですよ。しょっぱい麦茶なんか飲めやしない。  今日はこの間のお礼に伺った次第でして、ええ、あの後にご紹介して頂いたお家でもお買い上げいただきましてね。皆さん、泣いて喜んでました。早く帰ってくれてありがとうって。まったく失礼な。  いやー、しかし、素晴らしいお庭ですね。え?ガーデニングは奥さんがやってるんですか。どうりで品がな……いや、色彩が素晴らしいですね。こういう庭を猫のヒタイっていうんですよね。いやいや、褒めてますって、猫のヒタイほどは。  そうそう、本日はですね、こういう庭にピッタリの商品をお持ちしましたよ。鞄の中に~っと、失礼してカチャリっとね。ほら!これ!これ見てください!ほれ!ほれ!あ、すみません、興奮して振り回しちゃいました。草刈鎌。  うちにもあるですって?奥さん、冗談は顔だけにして下さいよ。いや、言葉のアヤですよ。ワタクシの所の商品がそんじょそこらの代物とは訳が違う!見た所は変わりないって?いいですか、説明しますよ?  かの剣豪宮本武蔵と戦った鎖鎌の名人、宍戸梅軒が使ったと言われる鎖鎌の鎌の部分を史実に基づいて再現した名品。ちゃんとここに銘まで打ってある由緒正しい品物です。え?肥後守って折りたたみのナイフじゃないかって?何をおっしゃいます奥さん。  もちろん、切れ味も抜群でして、汚れた部分だけを水洗いして頂ければ研がなくても、ずっと同じ切れ味を保つんです。今回はサービスでこの水洗い専用の石も付けておきますから、どうぞお使い下さい。あ、その石はちゃんと水につけてから使うといいですよ。こうゴシゴシっとね。
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