4.シゴキの方程式

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「今日は木曜だから、私が当番だな。では早速始めるかい?」  鹿島先輩が俺の顔を覗き込んだ。 「始めるって何をです?」 「なんだなんだ、その不安に満ちた顔はー?」  誰だって、この状況じゃこんな顔になりますよ!--と叫びたかったが、ぐっと堪える。 「とにかく、ついて来な」  鹿島先輩はそう言うと部室を出ていった。俺はふらふらした足取りで後を追いかけた。  鹿島先輩と俺は体育館にいた。  女子バレー部の主将が、鹿島先輩を見つけると駆け寄って来た。 「鹿島さん、どうもー。今日はどうしたのですか?」 「今日は新入り君の世話当番なんだ」 「へー、彼が……」  恐らく、俺の置かれている状況を理解しているのだろう。俺を見る目に同情の色が伺える。 「あー、そうだ。少しコート貸してもらえないかな?」 「どうぞどうぞ」  女子バレー部の主将は、鹿島先輩の頼みを快く受け入れた。  体操着に着替えて体育館に戻ると、鹿島先輩は俺をコートの中央に立たせた。 「誰か彼目掛けてスパイク打ってくれないかな?」 「じゃあ、私がやりましょう」  部員の一人が手を挙げた。
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