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「いや~葵ちゃんが何してもいいって言ったから、ついやっちゃった」
嘘だ、と葵は思った。それに何してもいいとは言ってない。だがあえてそれを口には出さなかった。こんな状態で言ってもベネデットの加虐心を煽るだけだからだ。
葵はただ悔しそうにベネデットを見つめた。
だが言おうと言わなかろうと実際あまり変わらないだろう。
葵は今、仰向けに倒れていて、顔が少し赤い。呼吸も荒く、麻痺のせいか時折小さくピクッとけいれんしている。
こんな姿をみたらその気がまったくない人間でもサディズムに目覚めそうなものだ。
ベネデットは立ち上がって落としたモーニングスターを背負うと葵のそばに再び座り込んだ。
そして葵の両膝の裏と背中に手を回して持ち上げた。
俗にいうお姫様抱っこである。
「~~~!?ちょっ!?降ろしっ降ろしてっ!」
葵は恥ずかしさのあまりもがいた。もがいたつもりだった。だが実際は麻痺のせいでまったくの無抵抗状態になっている。
「こんなとこにいつまでいたら危ないしもう行くよ。それと、葵ちゃん思ったより軽いね」
「お世辞はいいから降ろしてっ!さっさすがに恥ずかしいからっ」
「いやー街ってどんな感じなんだろうねぇ。こっちの世界にもピザとかパスタとかあるかな?」
「いいから話を聞けぇっ!これだからイタリア人はっ!」
こんなやりとりを交わしながらこの2人は森を抜け、街にたどり着いた。そして街に入ってなお、ベネデットはお姫様抱っこをやめなかった。
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