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「葵ちゃん、アレ、お願い」
ベネデットは葵のほうを見ないで言った。その様子から葵はベネデットのスイッチが切り替わったのを感じ、分かった、と言って魔法の詠唱を始める。
バトルフィールドが形成され終わった瞬間、ベネデットがモーニングスターを構え走り出した。
少し遅れてゴブリンも走り出す。
距離が近づいた時、葵が魔法を唱えた。
「スピードゲイン!」
その瞬間、ベネデットの周囲に魔法陣が浮かび、体内に収束した。
途端にベネデットが加速する。スピード強化の呪文だ。
そしてその勢いのままモーニングスターを先頭のゴブリンAに叩きつけ、吹っ飛ばした。ゴブリンAの頭上に『41』と、ダメージカウンターが浮かぶ。
ベネデットはブレーキをかけ止まるとモーニングスターを足元におき、ゴブリンたちを見てニヤリと笑う。
フーリガンという者達がいる。
それはサッカーの試合会場で暴徒化した者たちのことだ。彼らの特徴は暴動の理由がサッカーの試合結果に関係ないことである。暴れること、暴動そのものを目的としている。
スタジアム、近隣都市、交通機関など場所を問わず破壊活動を行う彼らはその危険性から、一部国家より入国禁止を言い渡させるほどである。
ベネデットは武闘派のフーリガンだった。
暴動や破壊活動、喧嘩や乱闘などは慣れたもので、むしろ興奮材料でさえあった。
ゴブリンBが錆びた斧を横薙ぎに振るった。ベネデットはそれをしゃがんでかわす。
すると次のゴブリンCが棍棒を手に飛びかかってきた。バックステップでこれもかわす。
最後に回り込んできたゴブリンDが骨ナイフを構え突進してきたがタイミングよく横に飛び跳ね、闘牛士のようにこれをかわす。
そしてターンが回る。
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