イタリアの伊達男と日本のボクっ娘

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ベネデットは放り投げたモーニングスターを拾い上げて、葵の方を見て笑いながら片手を上げる。ハイタッチの合図だ。 ベネデットは戦闘が終わると必ずハイタッチをする。最初のうち、葵は生き物を殺してハイタッチをする、という行為に不謹慎さを覚えていた。だが今ではもう気にならなくなっていた。 葵もそれに応えようと手を上げた時、あることに気づいた。 手の位置がいつもより高い。 ベネデットの身長は180センチ以上、対して葵の身長は150センチ程度。ハイタッチするにはベネデットが手を下げなければできない。にもかかわらずベネデットの手は自分の顔より高い位置にある。 葵はベネデットがニヤニヤしていることから自分がからかわれていることを感じ取った。あの戦闘の直後によくこんなことを思いつくなぁとある種の感動すら覚えた。 さて、ハイタッチだが、「届かないから下ろせ」と言うのは悔しい。 ジャンプすれば届かないこともないが、それでは子どもみたいだ。 自分も手を上げた以上気づかないふりもできない。 もう無視しようかなと思い始めた時、ふと閃いた。 葵は上げた手をクイクイッと曲げた。 打って来い、という彼女なりの合図だった。 要するに我慢比べである。これはこれで子どもじみているが気にしない。 だが意外にもこれはベネデットに効いた。 かわいい、と素直に思ったのだ。 目の前で小柄な少女がドヤ顔で手招きしている。しかもちょっと譲歩したつもりなのか背伸びをしている。おかげで足がぷるぷる震えているのだ。だがドヤ顔は崩さない。 正直、あと30分くらいこのまま我慢比べを続けたらどうなるか試してみたいと思った。だが、いつ敵がでてくるかわからない場所でそんなことをやるのは流石に危険だ。 ベネデットは我慢比べを続けたい気持ちを抑えて、一歩踏み出した。 それを見て葵は勝った!と心の中でガッツポーズを決めた。 その瞬間である。 踏み出された足を軸に、受け身を取らずにベネデットがうつ伏せに倒れた。
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