イタリアの伊達男と日本のボクっ娘

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重い音を立ててモーニングスターが落ちた。これには葵のドヤ顔も崩れる。 「どうした!?一体何が!?」 肩口の傷はもう塞がっているためそれが原因ではない。葵は持っていたスタッフを放り投げ、ベネデットのそばに座り込み、仰向けに体制を変えた後、急ぎディスプレイを開きパーティーメンバーの項目を表示させた。 そして葵の額に冷や汗が流れる。焦った表情はやっちまった的な表情に変わっていた。 ベネデットの状態異常の項目を見ると、麻痺となっている。 「葵ちゃん、これ実は狙ってやった?」とベネデットが言った。 実はベネデットの能力、『ドレイン』にはある欠点があった。それは対象が毒や麻痺などの状態異常を持っていた場合、それも吸収してしまう、というものだ。 つまりゴブリンに『ドレイン』をおこなったとき一緒に麻痺も吸収してしまったということだ。 そして葵はその能力を知ってた。なおかつあの時ベネデットがゴブリン相手に能力を使うであろうことも分かっていた。にもかかわらず麻痺呪文を使ってしまったのだ。 理由はただ、あの緊張した状態の中そこまで気が回らなかったというものだ。 ベネデットもそれはわかっている。分かってなお、さっきのいじわるな発言をしたのだ。 葵は再び焦った。麻痺呪文は覚えている(最初から覚えていた呪文のため覚えていた、というほうが適切かもしれない)が治療呪文は覚えていないのだ。つまりどうすることもできない。 「・・・そっその、すまない、わざとじゃ・・・」 「あー動けねぇ。敵が来たら死ぬなこりゃ」 ベネデットがつぶやく。これによりいっそう葵は焦る。 マジメな人間というのは取り返しのつかない事態をやってしまい、それがばれた時、何としてでも許してもらおうと努力する。そのためにはプライドだってかき捨ててしまう事もある。 マジメな葵はつい、この罪悪感から逃れたい一心で、あの言葉を言ってしまった。 「あの・・・本当にすまない。できることなら、そのっ、なんでもするから、なんていうか」 「ん?今何でもするって言ったよな?」
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