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永倉は躊躇することなく脱衣場に目をやった。
あれ程土方を抱きたいと…
愛していると思っていたのに…
しかし、いると思っていた総司の人影はなく…
永倉は、再び土方へと視線を戻した。
「これでお前の覚悟のほどがわかったよ」
土方は安堵の表情を浮かべて言った。
「総司が見てるって嘘…だったのか?」
唖然とする永倉に、土方はコクンと頷いた。
もし永倉が、沖田が見ていると信じ込んだままそれでも自分への愛情を貫くつもりならば、土方は本気で受け入れようと思っていた。
しかし、永倉は振り向いた。
土方の誘惑よりも、沖田を優先したのだ。
「これで誰がお前にとって大切な存在なのかがハッキリした」
「そうだな…俺は総司を…裏切ることはできなかった」
俯いたまま立ち上がる。
「風呂…久し振りに一緒に入ろうぜ」
土方が、浴室を出ようとする永倉の手を掴んだ。
「また…以前のように接してくれるのか?」
「勿論だよ。お前が先に裏切って、俺は言い出しっぺなのに約束を破った。これでおあいこだ…な?」
「うん…」
「体…すっかり冷えちまったな」
二人は大きめのバスタブに肩を並べた。
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