228人が本棚に入れています
本棚に追加
/337ページ
─ピピピピッ、ピピピピッ、ピピ
「……っさい」
人がせっかく気持ち良く寝てたっていうのに。上面のボタンを押し……た拍子に床に落ちた。まぁいいや。
ベッドから上体を起こし、伸びをする。「ん~~っ」と、こぼれた声を聞きながら、俺は寝ぼけた頭を覚醒させていった。
結局、昨日の「家に帰るべきか」という悩みに答えは出なかった。『それは君次第。どれが正しくて、何が間違ってるとか、そういう問題じゃないのよ』と小嶋さんは言った。俺は分かったような分かんないような、曖昧な頷きを返した。
『ただ、個人的には帰ってあげてほしいなって、そう思うな』
『どうして?』
『一児の母としては、お母さんの気持ちも分かるから』
『……え?』
唐突に明かされた衝撃の新事実だった。二十代と言われても普通に信じれる容姿をしているのに、既婚者とは……。
まぁ、そんなこんなで結果は出なかったわけだが、他人と悩みを共有するだけで、多少なりとも気持ちは落ち着くのだろう。昨日ほど思い詰めた気持ちにはならなかった。
顔を洗うべく、流し台に向かい鏡を見ると、また別の会話を思い出した。
最初のコメントを投稿しよう!