プロローグ

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静かな室内では小さな物音も耳につく。それは隣の小部屋から聞こえてくる音だ。辺りを見渡すと、そこもかしこも清潔感を感じさせる白色で統一されていて、見る側からすると少し眩しく感じさせる。 ここは大きな病院の診察室だ。定期的に通っているここの景色は飽きるほどに見てきたので、病院という無条件に緊張させる場所であってもこの診察室では気楽でいることが出来る。 「直していいぞ」 目の前に座った男が、耳から聴診器を外しながら言った。 その一言で、俺ははだけていたブラウスのボタンを留めていった。 「今日はまた、随分と変わった服装だな」 不意に、何の前触れもなく、眼前の男がそういって話しかけてきた。 「変わった服装?」 そんな奇抜な格好はしていない筈だ。だって……。 「……あぁ、なるほど」 自分の格好を見下ろして、ようやく彼の言わんとすることが理解できた。
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