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気配が何にも感じられず、本能的に一歩後ろに下がる。体の危険信号がそれを告げたのだ。
「お前一体何者だ」
怒鳴るハレスに対して、赤髪の男は微笑む。
「僕はただの旅人ですよ」
その答えに不満だったのかハレスが眉をしかめた。相手のペースに持っていかれると、厄介な為都合の良いことを言おうとした時赤髪の男が口を開く。
「納得出来ましたか?それより10年前のあの事件……」
続きを言わせまいとでもいうように、ハレスが赤髪の男に殺気を放った。一帯の空気が凍る、それ程に鋭い殺気なのだ。
反応を予想していたのか、動じずにただハレスを見据えている。ハレスにはそれが嘲笑っているかのように見えて怒りが込み上げてくる。
一番触れられたくない過去。その過去を抉られているような気がしてならない。
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