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どうしたんだろう…。
いきなり解くのやめて。
しかも、なんか堂々としてる。
解けていなくても、余裕的な…?
いやいやいや……つわものすぎる。
独り相撲な考えを巡らせ、夏原くんが黒板を見ているのと同じように、私も負けじと、彼を見た。
あまりに、不思議で、不可解で。無意識のうちに見ていた。
すると、夏原くんもいい加減私の視線に気がついたのか、こちらを向いた。
夏原くんと、数秒、目が合う。
端正な顔が、顔色ひとつ変えず、こちらを凝視した。
なんだコイツ、とでも言うかのように。
初めての事だった。
夏原くんと、目が合うのは。
「はーい、終わり。みんな解けたかー?黒板に書いてもらうぞー、当てるからなー?」
先生の声がすると、ふい、と夏原くんは目を逸らし、前を向いた。
シャーペンをまた手に取る。
そして。
「じゃあ…今日は14日だから~……14番、夏原!解いてくれるか?」
「はい」
すっ、と立ち上がり、ノートを持って教壇まで歩く。
教壇に上がり、ノートを見ながら、すらすらと黒板に習いたての証明問題の答えを書いていく夏原くんの後姿を見てはじめて、気付く。
あ…問題、解くのやめたんじゃなく……
解けてたんだ、と。
そりゃ、堂々とするや。
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