序章 『新・倭華記』より

11/23
前へ
/583ページ
次へ
ところが、村人達は洞窟の中で死んだはずの女の帰還を気味悪く思ったのだ。 その上、女はその腹に子を宿していた。まさしく神の子であった。 だが、それを知らない村人達は化け物の子供だと騒いだ。 産まれてくることは罪である。 存在は罪である。 声をあげることは罪である。 その眼で世を見るのは罪である。 その手で触れることは罪である。 その全てが罪の証である、と。 女はほどなくして子を産んだが、村人は親子を村八分にし、疎外という言葉では生温いほどの孤独を与えた。 これを見ていた神は、女の傍に居られない己の代わりに、従属していた犬と虎に命じて親子を護衛させた。
/583ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加