序章 『新・倭華記』より

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それについては、まずこの女について語らなければならないだろう。 まず、女はとても美しかった。 積もり始めた雪ような、白く透き通る肌。控えめな唇は紅を必要としない鮮やかな色を湛え、優しげな大きな瞳は不思議と緋色を帯びている。それに影を落とすように長い睫毛が添えられていた。 何よりも人々を魅了したのは、桜色の長い髪だ。それは、どれだけ厳しい寒さの冬でも、狂い咲く一本の儚げな桜のようだった。 女は王都にほど近い山麓の村に住んでいた。村の中でも、集落の中心より少し離れたところにひっそりと。 あまり多くを語らず、非常に真面目に畑仕事に勤しんだ。 そんな女に、村中の男達が惹かれたのは言うまでもない。それは若い青年のみに限らず、妻帯者に至っても同様に。 当然、それを村の女達は快く思わなかった。
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