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里桜はベッドで小さく寝息をたてる真子の傍に立つ。それに続いて、隣に天狗と白虎が立った。
「では……いきますよ。」
玉兎がそう言うと、額が淡く光を放ち、そこに先程までは無かった【卯】という文字が浮かび上がる。
何処からともなく風が吹いてとぐろを巻き、里桜の着ている赤いパーカーのフードがパタパタと靡く。風は少しずつ少しずつ真子に引き寄せられる。
「開門!」
玉兎の声が響き、真子の傍に集まった風が一気に舞い上がり止んだ。そこにひとつの大きな扉が口を開いて建っていた。青色の質素な造りの扉だった。開いた先は、様々な色の光が混ざり合い、禍々しく、それでいて神々しいなんとも言えぬ空間を生み出している。
「姫、お気をつけて。」
玉兎は里桜の身を案じた。
「今度こそ見つけて来るよ。」
里桜は心配は無用だと言うように笑った。彼女達はその扉の先で見つけなければならない物がある。扉を開いた玉兎はその扉を見張る役目がある。そこを通ることが出来ないので、信じて待つしかない。
里桜は真っ直ぐ先を見据え、躊躇いもなく足を踏み入れた。
続いて白虎が、「早く戻るよ」と玉兎の肩をポンポンと叩いて中に吸い込まれた。
「その女性には指一本触れるなよ?」と信用のない眼差しを残して、天狗が最後に扉を潜った。
残った玉兎は天井を見上げ、その上の天に祈るようにゆっくりと目を瞑った。
「今度こそ……」
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