序章 『新・倭華記』より

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ただ、それでも女は慎ましくも平穏に暮らしていた。 女は生来温和な性格で、その上人と関わることを極力避けていたので、争い事の火種となる事も巻き込まれる事も無かったのだ。 勿論、女は男を誑かすような事をしなかったし、その容姿を何かに利用することも無く、時には顔に泥を付けても気にせずに真面目に働いた。 しかし、そんな平和な生活も長くは続かなかった。連日の日照りで不作に見舞われたのだ。 女は毎日天の神に雨乞いをした。それはそれは、とても熱心に。
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