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二人は森を抜けて東方の町へ向かった。そう遠くはない。
そこは西洋の御伽噺を思わせる町並みだった。赤い煉瓦の建物が並び、道は石で舗装されている。規則正しく並んだ窓から漏れる灯りは少ない。その町の多くの者が夢の中なのだ。
街灯は乏しく、建物の壁にランタンが所々ぶら下がっている程度だ。その中の明かりが微かに揺らいでいる事から、その光源が火だという事が解る。おそらく、何らかの油を燃料としているのか、蝋燭が立てられているのだろう。
石畳の道には、馬車の車輪や馬の蹄とおぼしき跡が無数に残っている。小さい町ではあるが、昼間は活気があるのかもしれない。
二人は町の中心の広場で夜が明けるのを待つ事にした。夜分遅くに宿を探して不審に思われては厄介だ。
幸い、木製のベンチがあったので、冷たい石畳の上に直接腰を下ろさなくて済みそうだ。
「結界を張っておくよ。」
そう言って、 ゆっくり目を閉じ、眼前でピッタリと両手を合わせる白虎。すると、優しい温もりが二人を緩やかに包んだ。
白虎はベンチの周囲にドーム状の結界を作ったのだった。彼はそれを得意としていた。結界というのは目に見えるものではなく、肌やそれ以外の感覚で感じ取る読み取れるものだった。
「リオ、天羽斬(テンバザン)は反応してる?」
結界を張り終えた白虎は、里桜の隣に腰掛けて、里桜の持つ刀を指して言った。里桜は首を軽く横に振る。
「してない……と思う。ここにも居ないのかも。」
彼らははぐれた天狗を探さなくてはならなかったが、それ以外にも心奥門の先で見つけなければならないものがある。 その為に彼らは門を潜る。
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