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しかし、白虎は里桜の理解できない言葉で暫く老人と話した後、里桜の手を引いて老人の後ろについて歩き出した。
「え?え?どういう事?」
当然、老人の申し出を断って天狗を探すものだと思っていた里桜には訳が分からない。
「森に狼が出るそうだよ。取り敢えず話を聞いてみよう。」
白虎は補足説明をするように言った。
“森に狼”。
その言葉で里桜も老人の話を聞く気になった。その話は行方知れずの天狗に繋がる気がしたからだ。おそらく白虎の見解も同じであろう。
老人は二人を近くの建物に案内した。赤い煉瓦の二階建てで、必要な分だけの必要な部屋しかないというような質素なものだ。ここがこの老人の家だった。他に家族は居ないらしい。家具は全て古い木製の物で、少し歪なそれらは手製の温かみがあった。
老人に促されて椅子に座ると、老人は曲がった背骨で茶の準備をした。腰は何をするにしても都合が悪そうではあるが、その作業は手慣れたものであった。
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