赤騎士【二】

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丸みを帯びたホーローのカップに注がれた茶を飲みながら、白虎は熱心に老人の話を聞いた。理解できない里桜は、出された茶が紅茶に似ている等と、特に関係のない事ばかりぼんやりと考えていた。 話し終えた様子の白虎は、里桜にこう持ちかけた。 「明日、森のお婆さんのところへ行こう。」 老人の話によると、町に現れた狼の事件後、定期的に町に来ていた森に住む老婦人の姿が見えなくなったと言う。 老婦人は薬や魔法に詳しく、町に降りては病に伏せっている者へ薬を渡したり、まじないをかけてくれていたそうだ。そんな老婦人を皆は慕い、賢者様と呼んでいた。 賢者は狼の一件以来姿を現さなくなり、まさか病気か何かではないかと心配した町の者は見舞いに行ったのだが、十数年経った今でも誰一人帰ってくる者はなく、最近では森に近づくと黒い狼の群れが現れてじっとこちらを見ているので森に入ることすら難しいらしい。 「赤騎士様ならば、きっとまたお救い下さるはずでしょう!どうか、賢者様をお助け下さい!」 白虎はその用件を承諾したのだ。 「だって、狼だよ?もしかしたらその中に天狗が混ざっているかもしれないからね。」 その夜、里桜は一階のくたびれたソファで眠り、白虎は床の上に分厚い布を敷いて眠った。勿論、老人が二階の部屋で眠った後に結界を張って。
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