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二人は予期する不審な影の襲来に、ピンと警戒心を張る。五感を研ぎ澄ませ、あらゆる異変を見落とさぬよう、身体の全てをセンサーに変えて敏感に働かせる。
しかし、二人を見つめていた気配の主は、踵を返して森の中に入っていった。その一瞬を捉えた白虎は、それが黒い狼だと判った。
「追うよ!」
先頭を白虎が駆ける。
その後を里桜が駆ける。
青年の姿であっても白虎はとてつもなく速い。里桜は次第に遅れをとってしまう。それでもなんとか走る。
その先を行く狼は、時々立ち止まった。何故だか、その様子は二人と一定の距離以上離れてしまわないように振り返っているみたいだった。
「はあ……はあ……はあ……」
暫く走ると、赤い屋根の小さな家屋を見つけた。先程の狼は扉の前でじっと二人を見ていた。
「大丈夫?リオ」と白虎は息を切らした里桜を気にかけつつ、狼から目を逸らさない。「彼、僕らを襲う気は無いようだよ。中に入れって言ってる。」
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