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「ぐ……うう……」
足元からも新芽が顔を出すように何かが生え始める。太い縄のような蔓のような何かが、徐々に里桜の体を持ち上げて締め上げる。
「桜姫!!」
天狗はすぐさま里桜のもとへ駆けようとしたが、そこへ襲いかかる別の狼達。
その間にも、里桜の首まで伸びた蔓のようなものが白い肌に食い込む。
必死にもがいて外そうとするが、もがけばもがく程一層締め付けられた。
少しずつ、少しずつ、細くなる息。
意識を失いそうになる里桜の瞼が閉じかけた時、突如ブツリと蔓が切れ、地に叩きつけられた。里桜は激しく咳き込み倒れ込む。
「桜姫!」
天狗は飛びかかってくる狼のせいで先に進めない。その上、何故だが狼達を傷つけまいとしているようにも見える。
「リオ!」
いつの間にか転獣した白虎も、無数の狼に手こずっていた。
咽せ返る里桜に怒りの表情を向けて立っていたのは、天狗の傍で倒れていた老婦人だった。
「貴様か……」
発せられた声は奈落の底から絞り出されるようなおぞましいものだった。
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