序章 『新・倭華記』より

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最奥には湧き水が溜まった湖があったが、それ以外に変わったところはなく、勿論出口らしきものも見当たらなかった。 その湖は光の射し込まない暗い洞窟の中で、何故だか柔らかい光を纏っていた。その色は淡く瞬く翡翠のようだった。 水そのものが発光しているのか、その底に何かが潜んでいるのか、はたまた女が気づかないだけで何処かから光が漏れているのかは定かではなかった。 ただ、女は神秘のその場所で祈った。 神に救いを求めた。 ただただ、信心深く。 ただただ、祈った。
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