序章 『新・倭華記』より

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神はついに女の前に姿を現した。 湖は一層輝きを増し、神秘の光が女を包む。 とても温かく、とても優しい。 生命の大海のような、得も言われぬ浮遊感の中を揺蕩う。 女はその光の中で神を見た。 何故だか切なく懐かしく、涙が一筋の線を描いた。 「貴方に会いたかった。」 女と神は互いを慈しみ、それぞれの想いを反復した。 それは恍惚の極みにして、至高の愛慕に他ならなかった。
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