第一章

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寒い。どこまでも無機質な灰色の地面は俺の身体から容赦無く体温を奪って行く 顔を少し上げ背中に目を向ければ、そこには呼吸と共に上下する鱗に覆われた黒い翼。雨を弾き敵を切り裂く力強い翼も、今では所々穴が目立ち弱々しい 「っ痛ぅ……よぅ、今日も憎いほどに元気だな、食うぞ?」 起き上がって目の前を通った鼠にそう話しかける。鼠は慌てて自らの巣へと向かうであろう穴に走って行った 再び静寂につつまれる空間。ここは人間でいうところのなんだったか……監獄、いや、牢屋だったか 俺にとってはどうでもいいことだが 「……は……大丈…あぁ」 「だが……暴れたり……しかし……そうだな」 コツン…コツン… 奴等の足音が聞こえ、会話も微かに聞こえる。この音で俺は日付が変わったのだと判断する。そしてこれから自分が連れていかれる場所を思うと、どうしようもなく、死にたくなった
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