ゴーストホスピタル

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 入る者を頑なに拒む鬱蒼とした雰囲気の森を進むと、忘れ去られたようにぽつりと佇む廃病院が顔を出す。 かつて栄えていた精神病院も、数年の間に風化し、ツタが蔓延り、誰の仕業かガラスはほとんどが人為的に破壊されていた。 恐らく美咲達のような肝試しに訪れた心ない若者が、悪戯に行為に及んだことは簡単に推測できる。 「雰囲気出てるね」 懐中電灯の明かりを向けながら、美咲は隣でどっしりと構える龍也に微笑みかけた。 夏であるにも関わらず、割れた窓の隙間から肌寒い風が吹き抜けて音を鳴らす。 「ああ、悪くない。ほら博之、お前も少しは楽しめよ」 二人の後ろからおどおどとしながらついてくる博之が、眼鏡の奥の瞳を泳がせながら首を横に振る。 「なあ、もう帰ろうよ」 「はあ?まだ来たばっかりだろ?」 龍也はうんざりと呆れながらため息をついた。 いつも心霊スポットに来る度に弱音を吐いて帰宅願望を口にする博之に、龍也は毎回『どうしてコイツは肝試しサークルに入ったんだ?』と疑問を投げ掛けたくなる。 「噂のリハビリルームまではがんばろうよ、博之君」 兎の耳のような二つ縛りの髪を揺らして振り向いた美咲に、博之は眉を潜めながらもしぶしぶ頷いた。 足を止めていた三人は、懐中電灯の明かりを頼りに再びリノリウムの床を進んで行く。
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