ゴーストホスピタル

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 T市裏路地、通称『黒市街』。 華やかな市街地の裏側に位置するこの場所は悪人の溜まり場となり、治安の悪さは国内でも指折り数える中に入る。 煌びやかな市街地が光なら、対極する影に当てはまる黒市街。 様々な違法団体が根城にし、日々犯罪に塗れ、警察も手を焼いていた。 合併を繰り返して来たことにより広大な都市へと進化してきたT市が、手を広げすぎたと避難される理由がこの黒市街にあった。 ドラッグや人身売買が横行する無法地帯であるこの場所を訪れた美咲と龍也は、肝試し以上に怯えながら日当たりの悪いじめっとした道を歩いていた。 名前の通り市街地の大きな建物によって日光を遮られ、昼間であるにも関わらず薄暗い空間が広がる黒市街。 どこを見ても人相の悪い男の人や、露出の激しい女の人ばかり。 目が合えば殺されてしまうのではないかと緊張しながら肩を並べて警戒する。 「何なのここ……」 思わず愚痴を零す。 「知るかよ……」 「こんなところだなんて知ってたら来なかったのに」 「他に相談できる場所なんかないだろ?」 さすがの龍也もこればかりは恐怖を隠せないようで、明らかに語尾が震えていた。 精神病院の時と同じように腕にしがみつく美咲だったが、今の龍也は頼りにならない。
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