第八章 変化

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しかし、その幸せな時間も突如、破られた。 「静かに!!」 新治中佐が立ち上がり、辺りを見渡した。 「今日は私の隊の者と一瀬の隊の者で、合同訓練を行う!」 合同訓練…。 「時間は正午から。それまでは各自、自主訓練だ!それと」 ちらりと新治中佐がこちらを見た。 「如月は私の所へ来るように。」 身体が小さく跳ねた。 「……分かりま「その必要は無いでしょう?」 (あれ…?) あたしの声を誰かが遮る。 声をした方を見れば、上條さんが立ち上がり、新治中佐を見て……いや、睨みつけていた。 「上條、座れ。」 「隊長、すみません。しかし、それは出来ません。」 静かだが、それでいて有無を言わせない、そんな声。 「何故だ、上條?」 新治中佐が問い掛ける。 「彼女を苦しめたいですか?」 新治中佐が、ぴくりと眉を動かしたのが見えた。 「どういう意味だ。」 「そのままの意味ですよ、密。」 「…………貴様。」 二人が睨み合う。 「とにかく、彼女に用があるなら私達が居る場所にして下さい。昨夜みたいなのは困りますからね。」 上條さんが笑う。 鬼。 いつだったか、司が言った一言が思い出された。 (怖い……。) 身体が震える。それに気付いたのか、司がそっと肩を抱いてきた。 ふと見上げると、司と目が合う。 「あれが<鬼>の副隊長。でも、怖がる必要は無いよ。」 少し低めのトーンでそう言われると、何故か身体の震えは止まった。 「ありがとう…。」 「どう致しまして。」 司は、ふっと優しく笑みを浮かべたが、すぐに真剣な表情で二人を見た。 「そこまで言うなら、お前がここにいろ、徹。」 「分かりました。雛さん、私で構いませんか?」 「はい……一人よりは誰かが居てくれる方が良いです。」 「正直ですね。そう言ってくれて安心しました。」 また、上條さんが笑った。先程と違って暖かい笑みだった。 「これが彼女の本音ですよ、密。」 「いいだろう。」 新治中佐が座り、上條さんも座った。 また先程までの賑やかさが戻ってきた。 「雛に話って何だろうな?」 純が私達に問い掛ける。 「たいしたことない用件だと、思いたいですけどね…。」 響が不安げに答えた。 「どちらにしろ、上條副隊長がいる。雛は安心していいよ。」 「副隊長が一緒なら大丈夫だろ。」 「ですね!」 「三人がそう言ってくれれば、あたしも安心だよ。」 私は軽く微笑んだ。
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