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妻の料理はクソ不味い。
クソだ。
妻にかかればどんな高級食材も石ころに変わり、どんな新鮮食材もヘドロと化す。
そんな妻は、不幸なことに料理が好きだ。
追い討ちをかけるように、食に対する強いこだわりもある。
体に良くない物が入っているからと、レトルト食品や混ぜるだけの調味料は使わない。
以前、妻が友人と泊まりで旅行へ行った時。
こっそりとぐっさんのCMでお馴染みの中華料理を作って食べたのがバレた時だ。
妻ははらはらと涙を流しながら「私が家を空けてしまったばかりに、ごめんなさい」と自分を責めた。
それ以来混ぜるだけ調味料は一切買っていない。
外食もしていない。
会社の付き合いにも行っていない。
思えばあれが最後に食べたまともな食事だった。
ああ、考えるだけで涎があふれる。
今はあの日の味を思い出しながら、毎日毎日朝昼晩と、妻のクソ不味い料理を胃に流し込んでいる。
ただ、誤解しないで欲しい。
私は妻を心の底から愛している。
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