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「・・・・・・おい、ティアっ!大丈夫か!?」
「ええ、何とかね・・・。あんたのおかげで助かったわ」
ティアが直前に俺の隣にいたことが幸いして、ティアは俺にぶつかるだけで済んだようだ。
「そりゃ、よかった。にしても、なんで急に止まったりだなんてしたんだ?・・・おい、運転手さん?一体どうしたん・・・だ?」
運転手に声をかけようと外に出た瞬間、俺はなぜ止まったのか理解した。俺とティアを乗せた馬車は十数人ほどのいかにも柄の悪そうな盗賊に取り囲まれていたのだ。はぁ・・・。『王都までの旅路での悪いこと』のフラグはティアが回収したってのに・・・。
「悪いことはいわねぇ。俺らは別に命が欲しいってわけじゃねぇんだ。ただ、その馬車に乗ってるものを少しばかり頂戴すれば俺らはさっさといなくなるからよぉ?」
盗賊の頭と思われる男が顔を醜く歪ませながらそういった。
どう考えても『少しばかり』で済むわけがない。そして、何よりもこいつらにティアに触れさせるわけにはいかない。そのためにも、ティアには馬車の中で隠れてもらって・・・
「どう考えてもタダじゃ通してくれそうにはないわね・・・」
俺が振り返って声をかけようとした直前にティアが出てきてしまった。「おい、女がいるぜ!!」
「っても、まだガキじゃねぇか・・・」
「でも、あの歳にしちゃあ、結構育ってんじゃねぇか!それに中々の美人だ・・・。俺らが楽しませてもらった後に下種貴族にでも売り飛ばせば金になるぜぇええっ!」
「いいか、お前らっ!あの娘には手を出すなよ。あのガキと運転手はどうしても構わねぇ!!!」
「「「「「「おーーーっ!!!」」」」」
向こうは男ばかりの盗賊、十数人。
対してこちらは、完全に腰が抜けてしまっていて、当てになりそうもない運転手に、俺とティアの2人だけ。
・・・いや、十分か。
ティアを危険な目に合わせたくはないがこうなってしまってはしょうがない。
「ティア、あれを持って来てるよな?」
「愚問ね。こういうことがあることを予想してなかったわけじゃないわ」
「はははっ、だよな!よし、ならいくぞっ!!」
俺の掛け声と同時に、俺とティアは馬車を飛び出し、剣を鞘から抜きはなちながら、目の前の敵を薙ぎ払った。
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