魔法との邂逅

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「さて、これで盗賊の撃退完了だね」 「・・・これって全員、気絶してるだけですか?」 襲ってきた奴らとはいえ、安否が気になるのかティアが尋ねた。 「うん、気絶してるだけ。そこそこ統率力のあるグループだったみたいだし、王都まで連行して、警備兵に引き渡したら大喜びすると思うな。・・・そうだな、君達は元々、王都に行くつもりだったのかい?」 「はい、そうです」 「なら、運ぶのを手伝ってくれないかな?僕は馬一匹なもんだからこいつらを連れて行けそうもないんだ」 「もちろん、いいですよ?ティアもいいよな?」 「いいけど・・・こいつらが起きたら危なくないですか?」 「そのあたりは大丈夫。武器を奪って、全員、能力低下効果の縄で縛れば抵抗なんてできないから。何かあったら、僕が気絶させればいいし」 「なら、いいですよ。それに、こいつらには罰を受けてもらわないと気が済みませんから」 「よし、なら少しの間だけど王都にまでよろしくね、2人とも。そういえば、自己紹介がまだだったね。僕の名前はツール、ただの魔法使いだ」 こうして、俺、ティア、ツールさんの三人で王都までの一週間ほどを過ごした。元いた運転手は逃げ出してしまっていたらしく、俺とツールさんで交代しながら運転した。 因みに、道中で母さんの手記をツールさんに見せたが『魔法のことに関して書いているのは確かだけど、魔法で図形なんて見たことがない』らしい。 ちょっと、内心、がっかりしてしまったが、それほどイレギュラーな魔法だということだ。逆に、ますます興味が湧いてきた感はある。 その他は、ツールさんに魔法と王都に関してレクチャーしてもらいながら過ごした一週間だった。 王都に到着して別れる寸前にツールさんが言った。 「盗賊を一部、君たちだけで倒したわけだし、報酬金出ると思うからいつか2人に渡さなくちゃね」 「でも、私たち、どこに寮のどこに住むのかもまだ知らないですからお金を送ってもらおうにもどうしようもないですよ?」 「ああ、その点は大丈夫だよ。多分、入学して一ヶ月ちょっとでまた会うと思うからその時に渡すよ」 「え?それって一体どういう・・・」 「じゃあ、また会おうね、2人とも!」 ・・・最後に一番謎なことを言い残して去って行ったツールさんだったのだが、結局、あの人が何をしている人なのかは聞けずじまいだった。
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