第10章

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途端、夢生を中心に魔力が暴風のように吹き荒れる。 魔物の死骸も不意をつかれたエミリオも数十メートルほど吹き飛ばされる。 「ちっ!!.........なんでこんなに派手なんだよ。 」 徐々に魔力がおさまりそして見えた夢生の姿は大きく変わっていた。 長かった髪は赤いショートヘアに変わり、服装もメイド服からひらひらの袖に膝上までしかない真紅のドレスに変わっていた。 「んでこれで戦えってか.............まさかこんな日がくるなんてな。 」 夢生は一振りの剣を手にとる。 刀身が血の色のように紅い.......夢生が元々いた剣だった。 「さて、やるか。 エミリオからは逃げられねぇしな。 」 『ウゥ......人間メ。 ヨクモ.........。 』 両手に異常なほどの魔力を集めたエミリオが突っ込んでくる。 その手が夢生の顔に触れようとする直前、夢生が動く。 魔力が込められた右手をかわし、カウンターでボディに一発右の拳を打ち込む。 しかし、拳はエミリオに当たることなくすり抜けてしまう。 一般に精霊という類のものは魔力と精神で構成されている。 これは妖精とは大きく異なる点であり、実際に妖精は身体というものがある。 というわけで、精霊に物理攻撃は無効というわけだ。 「しまった!!」 その事を忘れていた夢生は空振りした時と同様にバランスを崩す。 エミリオは右手を魔力の鎌に変えて夢生を切り裂こうとする。 夢生は咄嗟の判断で左手で持っていた魔剣に魔力を通してその鎌を防ぐ。 (あぶねぇ.........死ぬかと思った.....。 ) 夢生はその一瞬の間に強化された身体能力で十メートルほど離れる。 『アガッ........マ、テ.......マテェェェェェェェェ!!』 エミリオはその顔を歪め再び夢生に肉迫する。 もはやホラーである。 『ガァァァァ......【扇光....ノ舞】。 』 エミリオは夢生との距離を詰めながら光の扇を夢生に飛ばす。 夢生は冷静に一つ一つを正確に見切り自分に当たりそうなものだけを斬り落とす。
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