第10章

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「おーい、天氷竜!! こっちにおいで!!」 陽姫が叫んだ。 すると天氷竜はピクッと身体を反応させ、そしてこちらを向く。 赤いその両眼で陽姫の姿を確認したのち、凄まじい咆哮を放つ。 威嚇である。 それはこれ以上近づけば容赦無く切り裂いてやる、そう言っているようにも感じられた。 「やる気満々だな。 だが、まだ厄介なのが残ってるんでな。 とりあえずじっとしてろ【エア・ロック】。 」 手始めに空気属性の拘束魔法を発動。 天氷竜の周りの空気を固め動きを封じる。 しかし、それでおとなしくなるほど天氷竜は甘くはなかった。 「グッ!?................ガアッ!!」 ピシッ バキッ 「おいおい...........そういうのありかよ。 」 陽姫の目線の先には拘束から脱した天氷竜の姿があった。 「魔力ですら凍らせるのか..........だるいなぁ。 」 明らかにやる気のない陽姫は奪妃を呼び出し構える。 天氷竜は先ほどの拘束で更に怒りを増し、その怒りをぶつけるかのように氷のレーザーを放つ。 陽姫は余裕をもってかわすが、それでも凍えるような冷気が陽姫を襲う。 (冷気を遮断してこれか........せめて黒炎が使えれば......) そう考えながらも今度は陽姫が斬りかかる。 陽姫のスピードに着いていけず、天氷竜は陽姫の姿を見失う。 陽姫が天氷竜の真下に入る。 天氷竜は反応出来ていない。 陽姫は奪妃を鞘から抜きそのまま天氷竜の腹目掛けて振り抜く。 音速を超えた抜刀術は天氷竜の鱗で覆われた腹をいともたやすく斬り裂く。 血が噴き出し、天氷竜は悲鳴のように叫び暴れる。 「ふぅ、斬れて良かった。 」 『ちょっと、良かったじゃないわよ!!冷たいじゃない!!』 「奪妃か。 だが、魔法が通用しないんでな。 魔力で刃を覆うからそれでちょっと我慢しててくれ。 」 『えぇ~~~。 えっ!?ちょっと待ってまだ心の準備がっ.........いやぁぁぁぁぁ!!』 奪妃の返事を待っている暇もなく振り下ろされた爪を奪妃で凌ぎ、そして押し返す。 ぐらついた巨体に更に連撃を加える。 『ハルキ..........後で手入れしなさい。 』 「おっけ。 んじゃここからが本領発揮だぜ。 」
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