第10章

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ギブラは揺らぐ結界に左手を捻じり込む。 肉の潰れる音がするが、目的を目の前にしたギブラには何も聞こえない。 そしてとうとう結界はこじ開けられ、ギブラの手に霊樹の実が渡る。 ギブラはそれを丸呑みする。 『あっ............そんな!!』 『くふふ...........素晴らしい、実に素晴らしいぞ!!』 噂はどうやら真実だった。 ギブラの全身から異常な量の魔力が溢れ、それが身体を包み激しく光を放つ。 『見ろ!!これが新しい姿だ!!』 光がおさまるとそこには先ほどまでのギブラの姿は無かった。 失われた翼と右腕は元どおりになるどころか以前より更に重厚な筋肉を纏い全体的に巨大になった。 『ははっ!!どうだ人間、これで貴様を肉塊にできブルウワッ!?』 「だからいちいち大声を出すな。 」 さっきと同じようにギブラを殴り飛ばした陽姫。 実は、ギブラが自分の力に酔いしれている間に魔衣を纏い、リオンに晩ご飯のメニューを聞いた陽姫にとってもはやギブラなどどうでも良かった。 「今日の晩飯はリオン特製のカレーピラフだ。 強くなったところ悪いが俺に殺されてもらう。 」 陽姫が駆け出す。 魔衣【冷気夜影】による圧倒的なスピードで迫る。 いくらギブラが強くなったとはいえ、これでは圧倒的だった。 ギブラに何かをする暇を与えずひたすら殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る........ 五分後、ギブラはミンチへの変貌を遂げていた。 「はぁっ、はあっ.........終わりだ【影食い】。 」 そういうと肉塊(ギブラ)の影が立体になり、そのまま肉塊(ギブラ)を飲み込みそして消えた。 「ふぅ...........おい清善童子、怪我は無いか? 」 『だっ、大丈夫じゃ。 それよりもお前は一体何者なんじゃ? あんな魔衣など見たことも無いぞ!! 』 「んっ、俺か? ただの学生だよ。 【万物の強奪『ダメージ』】対象、俺の中心とした半径三百メートルの領域。 」 陽姫は荒らしてしまった土地を再び元どおりにした。 「んじゃ、またなんかあったら念話しろよ。 」 『まっ、待つのじゃ!!..........行ってしもうた、せめて名前くらい教えてくれても良かったじゃろうが。 』 清善童子はトボトボと祠の中へと戻っていった。
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