30人が本棚に入れています
本棚に追加
/428ページ
ゆっくり、とヴィオレが首を傾げる。きらきらと金髪が光って、片方しかない紫の瞳が深く輝く。
「それ、フラムに言った?」
「いえ、まだ言ってない、です」
「そうか」
少し、項垂れる。だって、だって。
「はやく、行きたいんです」
「生き急ぐ意味は僕らにはないのに?」
「どんなに寿命があったって時間は有限です」
「そりゃそうさ。……まぁ、僕は止めないよ。何があっても止めない」
ありがとうございます、と吐息だけで呟いて頭を下げる。踵を返して書庫から出る、
「ちゃんとフラムには言うんだよ」
「勿論です」
振り返りはしなかった。
*
廊下をずかずかと歩く。脳内は現実逃避を始めてくれちゃって、旅支度なんてのを考えてる。ばーか逃げるな、
「ねぇ、フラム」
どうせ目の前に現実はあるんだから、さ。
最初のコメントを投稿しよう!