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…………… 唐突に、虫が飛んで来てないことに気付いた。灯りがあるのにも、関わらず。 (……帰った方がいい) 唐突にそう思う。兎が、ニィッと笑った気がした。咄嗟に後ずさった。が、草の根に引っ掛かり転けた。 「うぅっ」 呻き声が漏れた。何年か前にぎっくり腰で痛めて以来、腰痛に悩まされてきたが、その腰を打ってしまった。 ぴかっと、兎の目が光った気がした。 (――!?――) かちん!かちんかちんかちん! 家の灯りがついた。庭中にも灯りがついていく。 …………… 数秒、恐ろしい程の沈黙が降りた。 ―――ちりりん――― 可愛らしい鐘の音がした。家の扉についた鐘の音だった。ひょっこりと顔を覗かせたのは、七歳くらいの女の子だった。
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